MACD? またもや知らないことばが出てきたぞ!? Apple社のPCもハンバーガーも関係ないよね??
関係ないわ! マックディーはテクニカル指標の1つよ!!
ああ、それなら「移動平均線」や「ボリンジャーバンド」なんかと一緒だね!
MACD(マックディー)の基礎知識
最初にMACDの基礎知識から入りたいと思います。MACDがどのようなテクニカル指標なのか、どのような計算式を用いているのかを解説します。
MACDとは
MACDとは、オシレーター系のテクニカル指標の1つです。指標の名称と同じ「MACD」と呼ばれるラインと「シグナル」と呼ばれる2本のラインを用いて、相場の状況を把握し、買いと売りのタイミングを判断することができる画期的なテクニカル指標です。
MACDということばについては紛らわしい点があるので、以下テクニカル指標を指す場合は何もつけずにMACD、ラインの場合は「」(カギかっこ)を付けて「MACD」と表記します。
MACDは「Moving Average Convergence Divergence」の略で、日本語では「移動平均収束拡散」と呼びます。「Moving Average」は「移動平均線」のことで、「Convergence」は「収束」、「Divergence」は拡散という意味です。
「MACD」と、「シグナル」の計算のしかたは次のようになります。
「MACD」 → 短期のEMA(指数平滑移動平均線) - 中期EMA(指数平滑移動平均線)
「シグナル」 → 「MACD」のSMA(単純移動平均線)
SMA(単純移動平均線)とEMA(指数移動平均線)の違いについてですが、SMAは過去の価格の単純平均で計算されています。それに対してEMAは、直近の価格に比重をかけて算出するため、SMAに比べて直近の動きに敏感に反応します。
次は「USD/JPY」(米ドル円)の1時間足のチャートですが、20日移動平均線のSMA(単純移動平均線)と、EMA(指数移動平均線)の両方を表示しています。
これを見ると、SMA(緑)よりもEMA(赤)の方が直近の価格に敏感に反応していることが分かります。値動きに対する追従性が高いのがEMAの特徴といえます。
「MACD」と「シグナル」、「ヒストグラム」
上の図は「USD/JPY」(米ドル円)の1時間足のチャートに、「MACD」、「シグナル」、そして「ヒストグラム」を表示したものです
「MACD」のパラメーターは、一般的に短期のEMAの期間が9もしくは12、中期のEMAの期間には26を用います。また、「シグナル」で使用するSMAの期間は9を用います。ここでは、短期のEMAの期間は9に設定しています。
「MACD」は短期のEMAから中期のEMAを引いた値であることは重要です。
なぜなら、「MACD」の値がプラスになるときは、短期EMAが中期EMAの上にあることから、チャートは上昇中であることが分かります。逆に「MACD」の値がマイナスの時は、短期EMAが中期EMAの下にあることから、チャートは下降していることが分かるからです。
また、ヒストグラムは「MACD」から「シグナル」の値を引いて、棒グラフにしたものです。ヒストグラムから分かるのは、「MACD」と「シグナル」の乖離の度合いです。ヒストグラムが高いほど、「MACD」と「シグナル」との乖離が大きいということになります。
MACDの見方と使い方
では、ここからは実際のトレードで、MACDのどこに注目し、どのように使っていくかについて解説していきましょう。
「MACD」と「シグナル」のクロスに注目する
最初に見るべきポイントとしては、「MACD」と「シグナル」が交差するところです。
基本的な考え方は移動平均線と同じです。「MACD」が短期の移動平均線、「シグナル」が中期(長期)の移動平均線と同じ役割をしていると考えてみてください。
移動平均線については、同じコラムの「移動平均線はどう見ればいいの? 移動平均線の4つの使い方を、FX初心者にもわかりやすく解説します。」に詳しい解説がありますので、参考にしてください。
MACDでは「MACD」が「シグナル」を上抜けば、買いのシグナルです。移動平均線でいうところの「ゴールデンクロス」にあたります。逆に「MACD」が「シグナル」を下抜けば、売りのシグナルです。移動平均線では「デッドクロス」にあたります。
「MACD」が「シグナル」を上抜く → 買いのシグナル(ゴールデンクロス)
「MACD」が「シグナル」を下抜く → 売りのシグナル(デッドクロス)
このような「MACD」と「シグナル」のクロスは、グラフのゼロライン(ヒストグラムが0を表すラインのこと)から離れたところで発生すると、より精度の高い売買のシグナルになります。
また、「MACD」が「シグナル」を上抜いた後に、さらにゼロライを上回るとより確実な買いのシグナル、「MACD」が「シグナル」を下抜いた後に、ゼロラインを下回るとより確実な売りのシグナルだといわれます。
「MACD」と「シグナル」がクロスしてから、ゼロラインを上抜く、あるいは下抜くまでには、ある程度の時間が経過するので、ボラティリティーが低くなることは否めませんが、確実なトレードを第1に考えるのであれば、上記のことを念頭に置いてトレードをするのも1つの方法でしょう。
ゼロラインに対する「MACD」と「シグナル」の位置に注目する
次に、ゼロラインに対する「MACD」と「シグナル」の位置についてみていきましょう。
ゼロラインとは、「MACD」の値が0になる場所、「シグナル」の値が0になる場所です。
「MACD」は短期のEMAから中期のEMAを引いた値でした。仮に直近の値動きが上昇もしくは下降していれば、短期のEMAがまず反応し、反応が緩やかな長期のEMAとの間に差を生じて、「MACD」の値も「シグナル」の値も0にはなりません。
したがって「MACD」と「シグナル」の値が0になるというのは、売りと買いが釣り合っている(拮抗している)状態を表しています。
上のチャートでは、赤い丸で囲んだところがゼロラインになります。「MACD」と「シグナル」がゼロラインの近辺にあるときは、実際の値動きもほとんどありません。(青い線で囲んだ部分)
ところが、売りと買いの拮抗状態が破れて、値動きが上昇し始めると、「MACD」と「シグナル」がゼロラインを越えて上方に位置します。
このように、「MACD」と「シグナル」の2本のラインがゼロライより上に位置するときは、上昇トレンドが発生しており、買いのシグナルとなります。2本のラインがゼロラインより下に位置したときは、下降トレンドが発生しており、売りのシグナルとなります。
「MACD」と「シグナル」がゼロラインより上に位置する → 買いのシグナル
「MACD」と「シグナル」がゼロラインより下に位置する → 売りのシグナル
「MACD」と「シグナル」との乖離に注目する
ここまで、MACDを使った、売りや買いのシグナルについて紹介してきましたが、これらは、いずれもエントリーポイントに関するものでした。
では、利益確定はどのタイミングで行えばよいでしょうか。
例えば、「MACD」と「シグナル」のゴールデンクロスで買いのエントリーをおこない、2本のラインがデッドクロスするのを待って、利益確定をする。あるいはデッドクロスで売りのエントリーを行い、2本のラインがゴールデンクロスをするタイミングで利益確定する。というのも決して間違いではありませんが、タイミング的にはやや遅く、利幅が狭くなってしまいます。
そこで、「MACD」と「シグナル」の乖離に注目して、利益確定を行う方法を紹介します。
「MACD」と「シグナル」は値幅の変動が大きいほど乖離していきますが、いったん乖離しきったあとは、「MACD」の値が、「シグナル」に引っ張られて近づいていきます。「MACD」が「シグナル」に近づき始める直前の、2本のラインがもっとも大きく乖離したタイミングが、値幅の最も大きくなるポイントになります。
2本のラインの乖離の幅は、チャートを見ただけでは確認がしにくいので、そこで役に立つのが、「ヒストグラム」です。
最初の方で触れましたが、MACDのヒストグラムは、「MACD」から「シグナル」の値を引いて、その値を棒グラフにしたものです。
ヒストグラムから分かるのは、「MACD」と「シグナル」の乖離の度合いです。ヒストグラム高さが高いほど、「MACD」と「シグナル」との乖離が大きいということになります。
したがって、前のヒストグラムの高さに次のヒストグラムの高さが届かなかったタイミングで利益確定をすると、より大きな値幅でトレードを終えることができることになります。
利益確定は、「MACD」と「シグナル」乖離がピークアウトしたタイミングで行う
前のヒストグラムの高さを次のヒストグラムの高さが越えられなかったら利益確定
ダイバージェンス
「ダイバージェンス」とは、値動きとテクニカル指標(ここでは「MACD」)の動きが、逆行している状態のことです。
たとえば、値動きは上昇しているのに「MACD」は下降しているといった状態をさします。
ダイバージェンスが、トレンド中に発生した場合は、そのトレンドが弱くなっていることを表しています。引き続いてトレンド転換が起きる可能性を強く示しているので、十分に注意が必要です。
このチャートでは、緑のラインを引いた部分で値動きは上昇していますが、「MACD」は下降しています。ダイバージェンスが発生しています。そして、値動きはそれまでの上昇から下降へと転じています。
ダイバージェンスが発生したら、トレンド転換に注意!
MACDを使うときの注意点
では、MACDを活用する際の注意点について、最後に触れておきたいと思います。
これまで見てきたように、MACDは使いやすくまた精度の高いテクニカル指標といえますが、ウィークポイントもあります。
MACDは、トレンドが発生している時には高い精度で機能しますが、トレンドが終了し、レンジの状態になると実際の値動き以上に過敏に反応することがあります。つまり、ダマシが発生するということです。
ダマシであるのか本当の値動きなのかを見極めるためには、他のテクニカル指標とあわせて用いるのが効果的です。RSIや移動平均線などがおすすめのテクニカル指標です。
まとめ
今回は、オシレーター系のテクニカル指標である、MAXDについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
特に「MACD」と「シグナル」の2本のラインのクロスを用いたエントリー方法、「MACD」「シグナル」の2本のラインと「ゼロライン」を用いたエントリー方法、ヒストグラムを用いた利益確定の仕方等については、ぜひマスターをして、自身のトレードの中で実践できるようになっていただければ、と思います。
FX初心者からベテランまで、多くのトレーダーから高い評価を得ているMACDを、自分の強い味方として活用し、トレードのスキルをさらにあげていきましょう。
参考:『FXのチャートがみるみるわかる本』(ダイヤモンド社出版)